親子三代で柏崎の海へ 豊富な魚に多彩な漁法
新潟漁業協同組合柏崎支所
茂田井 光平(もたい こうへい)さん
親子三代で海に出る茂田井光平さん。現在47歳と、漁師の中ではまだ若手ながら、さまざまな漁に精通。調理師免許も取得していて、魚をおいしく食べる知識も豊富です。
■親父の背中を見て、あこがれた漁師の世界
なぜお父さんと同じ漁師の道を選ばれたのですか?
親父が漁師をしている姿を子どものときから見ていました。魚を獲って帰ってくる姿に「いいな」「かっこいいな」と、ずっと憧れていました。現在は、漁師一本に絞りましたが、私が子どものころ、親父は飲食業と漁師、二足のわらじを履く形で仕事をしていました。ですから私も高校を卒業後に、調理師の専門学校に通いました。そして卒業後、23歳のときに漁業協同組合の組合員になり、船に乗るようになりました。
初めて漁に出たときのことは覚えていますか?
親父の手伝いとして、それまで船に乗ったことはありました。しかし、いざ漁師として海に出ると、その緊張感は比べものにならず、全てのことに無我夢中で、正直あまり覚えていません。でも、親父からは「海が荒れる状況まで海に出ていることはない。危険な目に遭ってまで魚を獲るようなことはするな」と口酸っぱく言われました。陸上と違って、海は自然が相手です。安全操業を今も大事にしているのは、親父の教えがあったからです。
■岩場が多く、さまざまな魚が獲れる豊かな漁場
どのような漁をされているのですか?
春から11月までは、刺し網漁をするために海へ出ています。刺し網漁では、タラやヒラメ、カレイにノドグロなどが獲れます。また、毎年6月20日から8月20日までは、素潜りで貝や海藻を獲る採介藻漁業(さいかいそうぎょぎょう)が可能になります。この間は、海に潜って、カキやアワビ、モズクなどを獲っています。桶流しもしますね。
桶流しとはなんですか?
5月から9月にかけて行われる、柏崎の伝統的な漁法で、正式には桶流し一本釣りといいます。3〜4本の針がついた仕掛けを桶にくくりつけて、潮流に乗せて流します。獲れるのは、高級魚として知られるアラ。現在、新潟漁業協同組合柏崎支所では、桶流し一本釣りで漁獲し、神経締めした2キロ以上のアラを「柏崎のアラ」と認定して、ブランド化をしようと取り組んでいます。柏崎市内の飲食店、13店舗で食べることができますよ(注意:提供期間は例年7~8月)。
柏崎は漁場としてどのような特徴がありますか?
魚が産卵するのに適した岩場が多い場所です。いろいろな種類の魚が生息する、豊かな漁場だと思います。
漁師という仕事の醍醐味(だいごみ)を教えてください
仕掛けた網を見ながら、上げる瞬間ですね。下を見ながら、上げていき、網の底に魚がたくさんかかっているのを見たときにはなんとも言えないうれしさが込み上げます。そんなにいっぱいは獲れなくても、ノドグロの形のいいのが入っていたときには、自然とガッツポーズが出ますね。
■後継者不足だからこそ、柏崎の魚の価値は上がる
今年から息子さんも漁師になられたそうですね
はい。20歳になり、この春から准組合員として組合にも入れていただき、今は親父と私、息子の3人で一緒に漁へ出ています。まだ、海に出始めたばかりの息子は、魚が獲れる楽しさや海の危険さを十分に理解できていないと思います。先日も、海に出た船の中でいかりを運ぶ際、海側にいかりの先端を向けて歩いていました。「シケのとき、その持ち方では海に落ちてしまうぞ。いかりは船の内側に向けて持ちなさい」と注意をしました。これから、毎日勉強ですね。
茂田井さんのように、柏崎の他の漁師さんたちも後継者はいらっしゃるのですか?
いえ、後継者不足です。大変な仕事なので、子どもに継がせたくないと考えている方が大半です。5年後には漁師の数は今の半分以下になってしまうのではないでしょうか。だからこそ、息子にはこんなことを言いました。「漁師は少なくなるが、漁場や魚に変わりはない。獲れる魚が減っても需要はあるのだから、柏崎の魚の価値は今後上がるはず。そのときに備えて、今は一生懸命頑張っていろいろ吸収していこう」と。アラもそうですが、柏崎の魚がどんどんブランド化していき、もっと多くの方から求められるようになるとうれしいですね。
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