薬剤師の仕事といえば、多くの方が調剤業務をイメージされるのではないでしょうか？
現在、医師の働き方改革で、医師の負担軽減に向け、これまで医師が担当していた業務の一部を薬剤師にシフトする取り組みが進んでいます。
今回取材したのは、その取り組みを担う独立行政法人国立病院機構新潟病院（以下、新潟病院）勤務の薬剤師・池田さんと花垣さんです。
調剤業務の他、どんな仕事をしているの？ 調剤薬局と病院で働く薬剤師の違いは？ などをインタビューしました（取材：2021年8月）。
interviewees profile
花垣 諒太（はながき りょうた）さん 写真右
長岡市出身・在住。抗がん剤の取り組みを行う薬剤師。
池田 雅司（いけだ まさし）さん 写真左
北海道出身・柏崎市在住。抗菌薬、抗生物質などの取り組みを行うAST専任薬剤師
■2人の勤務先、新潟病院ってどんな病院？
内科、小児科、外科、脳神経内科などの地域医療と難病などの専門医療を行う医療機関。
柏崎・刈羽地域の救急医療も担う。
参考：新潟病院HP
■薬剤師の仕事とは？
調剤業務の他、多岐にわたる業務
―どんな仕事をしているの？
池田：医師の処方を基に内服・外用や注射の準備をしたり、抗がん剤の調製を行ったりします。また、患者さんの体の状態を見て、副作用などの症状があれば、別の薬への変更を提案します。私はASTと言われる抗菌薬の適正使用に関する業務を行っています。抗菌薬が効きにくくなる耐性菌を少しでも減らす目的で、抗菌薬の選択、医師から相談があった際の薬の提案を行っています。
花垣：先日も医師と患者さんの薬を相談して決めました。薬は副作用が生じることもあるので、患者さんの負担軽減のためにも副作用の早期発見に努めています。
あと、薬の管理も薬剤師の仕事です。
―薬剤師になるには？
池田：薬剤師になるためには薬学部のある大学か薬科大学で6年制の薬剤師養成課程を修了し、国家試験を受けて合格する必要があります。
以前は4年制でしたが私の代（2006年4月1日の入学者）から6年制になりました。
―薬剤師になろうと思ったきっかけは？
池田：祖母が薬局、母が病院で薬剤師をしていて、身近なものだったからです。
花垣：もともと医療系の仕事に興味があり、薬剤師を目指すことができる系列の大学に通っていたからです。
―薬剤師＝理系のイメージがありますが、学生時代は文系科目よりも理系科目が好きだった？
花垣：理系の方が好きでしたが、文系が嫌いというわけでもなかったです。
池田：国語が嫌いでした。特に現代文が大嫌いでした（笑）。
―大学の実習は何を行うの？
花垣：薬の調剤や服薬指導です。
池田：大学5年次に病院と薬局へ実習に行きます。その時、直接患者さんへの服薬指導や、薬を渡しながら服薬説明をします。
―病院勤務を選んだ理由は？
池田：病院勤務の薬剤師は、医師や看護師など他の医療関係者の方と一緒にチーム医療として活躍できるところに魅力を感じたからです。いろいろな疾患も学べるということもありました。
花垣：病院は、医師・看護師と直接、いろいろな話ができるという点から病院を選びました。いろいろな疾患に携われるので医療の勉強もできるかなと思いました。
―病院で働く薬剤師の特徴は？
花垣：日常的に注射薬の調製を行います。抗がん剤の調製は、無菌の環境で行っています。
―スキルアップは？
池田：目指す道がスペシャリストかジェネラリストかによって違います。
スペシャリストの例として、特化した分野の仕事をやりたいということであれば、感染制御の認定薬剤師や抗菌化学療法の認定薬剤師など、学会に所属して認定試験を受ける方法があります。
ジェネラリストの例だと、薬剤師会主催の勉強会で、感染症、癌、循環器の疾患、心臓の疾患、栄養など、それぞれの薬について、幅広く勉強する方法があります。
―やりがい・魅力は？
池田：多職種の人と関わる仕事であり、いろいろな疾患を学べることです。
花垣：同じです。いろいろな疾患にも携わることができます。
―コミュニケーション能力も必要？
池田：そうですね。患者さんの困り事を聞き出すという点では、コミュニケーション能力も大切だと思います。
―患者さんと接して嬉しかったことは？
花垣：医師が最初に処方した薬を「こっちの薬が合うんじゃないかな」と思い別の薬を提案したところ、薬が効いたのでありがとうとお礼を言われたことです。
―薬剤師に向いているのはどんな人？
花垣：真面目な人ですかね。薬剤師はみんな真面目と言われます。
―実際、真面目？
花垣：ん～（笑）。注射の調製はミリ単位で合わせるので、そういう面では職業柄几帳面にはなります。というかならざるを得ないんです。投与量を間違えてしまうと大変なことになってしまうので、のちのち几帳面になりますね。
―几帳面になってしまうと、料理の時に大さじ・小さじ・グラム数をきっちり量る？
花垣：そこは目分量です（笑）。人によるとは思いますが、自分のことは適当にやっても自分以外のことになるとやはり几帳面になりますね。
池田：やはり人それぞれですね。
■勤務先のお話
ジョークを言い合うけど、仕事でバチバチすることも
―新潟病院に務めて何年くらい？
池田：4年目です。
花垣：8年目です。
―新潟病院に勤務する薬剤師は何人？
池田：6人です。
―職員さんの雰囲気は？
花垣：仲良くなればジョークも言い合います（笑）。コロナ前は飲み会をしていました。患者さんのために仕事をしているという志は同じなので、仕事上バチバチすることはあります。
池田：規模の大きい大学病院だと、薬剤師の数が50人ほどになり薬剤部内でも接する機会が減ります。当院は、薬剤師の人数が少ないなりに目を見て話すことができると思います。
―新潟病院の魅力・特徴は？
池田：他の病院だとなかなか経験することがないパーキンソン病などの神経疾患に携われるところです。
花垣：当院は、基礎疾患（パーキンソン病、重症心身症、筋ジストロフィー、ALS（筋萎縮性側索硬化症））を診ているので、特殊な薬に携われるところです。
薬とあまり関係ないですが、ロボットスーツ（※１）がありリハビリも充実しています。
（※１）ロボットスーツ：動作の補助や筋力アップなどを目的とし、人体に装着して、下肢や上体などの動きを補助する装置の総称。パワードスーツと呼ばれることもある。腕や脚の力を補い、立ち上がったり、座ったりする動作や、歩行、階段昇降、重いものの保持や運搬などの動作を補助する。
―夜勤は？
花垣：当直はありませんが自宅で待機し、呼ばれたらかけつけます。他の病院だと医師の当直のように、病院にいる体制をとるところもありますし、当直が全くないところもあります。施設によりけりですね。
―救急外来で、薬の処方が必要となった場合はかけつけるの？
花垣：救急外来にある程度薬がストックされているので、そこで対応してもらう場合もありますが、対応できない場合はかけつけます。
■柏崎での生活のお話
海鮮がおいしい
―お二人の出身地は？
池田：北海道です。大学は東京でした。
花垣：長岡市です。
―柏崎市の魅力・過ごし方は？
池田：自然が豊かですよね。北海道出身者が何を言ってんだって感じですけど（笑）。
あとは、海がおいしいですね。
病院自体が海に近いので、海沿いを歩くことがあります。
―北海道よりもおいしい？（笑）
池田：柏崎でしか食べられないものもあるので。おいしくいただいています。
―コロナ前、柏崎のイベントに参加したことは？
池田：花火を見ました。病棟からも見えますよ。
花垣：以前、柏崎に住んでいたので、えんま市や花火を歩いて見に行きました。
池田：「秋の収穫祭」に行きました。いろいろな食べ物があっておいしかったですね。鯛茶漬けは珍しいなと思いました。
■進路選択のアドバイス
ネットも使いながら、実際の目で見極めて
―進路に迷っている学生や保護者に対してのメッセージを
花垣：薬剤師はやりがいはありますが、決して簡単な仕事ではないです。
池田：日々勉強というかどんどん情報が入れ替わるので、続けていく信念が必要です。
進路は、いろいろな経験をしてきっかけを見つけながら選択してほしいです。今だとネットがあるのでいろいろ探せますしね。昔は情報があまり入手できなかったけど、今の世代ならではのやり方もあるのかなと（笑）。ただ、ネットの情報だけだと誤解が生じることもあるので時には実際に見て、見極めながらですね。
花垣：自分のやりたいことでないと長続きしないと思います。まずは興味のあることから頑張ってみてほしいと思います。