社会人になって出会った辻本さんと田辺さん。2021年1月からそれぞれの自宅と高柳町石黒のシェアハウスでの2拠点で生活を始めています。
出身地が違う2人が出会ったきっかけは? どうして石黒地区に住むことにしたの?
引っ越し準備を進める2人にいろいろと、聞いちゃいました!(取材:2020年12月)
interviewee profile
辻本 早紀(つじもと さき)さん 写真右
奈良県出身。
大阪府の大学を卒業後、2020年から柏崎市に移住。柏崎市内を中心にまちづくりを支援する組織「NPO法人柏崎まちづくりネットあいさ」に勤務。23歳。
田辺 久美子(たなべ くみこ)さん 写真左
高柳町岡野町出身。
東京都での生活を経て、水引細工やつまみ細工で和小物のものづくりをする「和工房 花手毬-hana temari-」を営む。23歳。
■高柳町石黒ってこんなところ
石黒は、柏崎市中心部から南へ20キロメートルに位置する地区。
黒姫山(標高891メートル)の麓の山間に7つの集落が点在している。
ブナ林や棚田が広がる自然豊かな環境で、中でも「花坂の棚田」は、日本棚田百選に認定されている。
新潟県内でも有数の豪雪地帯で、冬には3メートルの雪が積もる(なんと今冬は、最大で4メートル近くの積雪を記録!)。
2021年1月現在、33世帯66人が暮らしている。
石黒はすごく居心地がいい
―辻本さんは奈良県出身ですが、そもそも柏崎市に来たきっかけは?
辻本:
元々山で暮らしたかったんです。都会は常に情報が溢れて、商業的で、疲れてしまうので苦手でした。
2018年、大学3年生の時に「村・留学」(※)で高柳町荻ノ島に来ました。衣食住の関係性の中で生きていると感じました。衣食住が自分や誰かが作ったものでできていることを実感したんです。すごく自分の身の丈に合っているし、そういう生活がしたいと思いました。
(※)「村・留学」:大学生を中心とした若者が、地方都市に短期滞在をして、地元の方と交流をしながら伝統・自然・食などの暮らしを学ぶプログラム。辻本さんは、荻ノ島地区の「村・留学」の1期生として9日間、滞在した。
―石黒でシェアハウスを始めるきっかけは?
田辺:
2018年に「Like Work School」(※)に参加して、最終的にたどり着いたのが、石黒に住みたいという思いでした。せっかくなら1人で住むより、誰かと住んだ方が楽しいだろうなと思いました。
最初は父の実家(石黒)で暮らすことも考えましたが、父や親戚の行き来があり、自分たち以外の気配を感じてしまうので、プライベートが大変かなと。だったら、別の家がいいと探していました。母からの情報で、この家が今年から空くということだったので、使わせてもらえないかなと。
(※)「Like Work School」:かしわざき市民活動センターまちからで行われた、自分の「好き」や「やりたいこと」を実践につなげ、まちをよりよくしていくことにも結び付けていく全4回の講座。
―どうして石黒で暮らしてみたいと思ったの?
田辺:
小さい頃、石黒のおばあちゃんによく面倒を見てもらっていました。おばあちゃんの家に集落の人が集まってきて、その空気感が好きでした。おばあちゃんのことも好きだったので、それでですかね。
おばあちゃんが畑でサツマイモなどいろいろ育てていたので、小学生の頃「サツマイモ掘りしよう!」と友だちを誘って連れてきていました。
石黒は余計な音がしないのが好きなんです。岡野町は中心部なので、車の音がしますが、こっちはほとんど車が通りません。ふと気を抜いた時の時間の流れ方や、音の聞こえ方がゆったりとしていて、すごく居心地がいいです。夏場は最高ですね。窓を開けて畳の上でボケーっとしているのが好きです。セミの鳴き声と鳥のさえずりと、みたいな。夜はクーラーじゃなくて網戸で寝られますよ。
その分、自然に対してやらなきゃいけないことはいっぱいあります。町場では必要ないことでもこっちでは必要です。今だったら除雪。夏場は草刈り。春は雪囲いなどを片づけなきゃいけないし、秋は稲刈りや冬の準備がある。なんでこんなに忙しいんだろうとドタバタしています。外の作業は天候次第のところもあって、どんどん遅れてしまうこともあります。冬になるとやれることが少なくなるので、やれるうちにやっておかないと。晴れの日は貴重ですね。
―今冬は初雪が1メートル超えましたね。
辻本:
いきなり降りましたね。すごい!ワクワク!する気持ちと、車の運転時の恐怖が(笑)。運転は、慣らしながら練習するつもりだったのですが…。でも、ワクワクが勝っています。まだ雪の大変さを経験していないからかもしれませんけど。あんなに大量の雪は生まれて初めて見ました。
ここに来るまではウインタースポーツをしたことがなかったです。ほんの少しの積雪で「雪だ!すごい!」と言っていたくらい。別世界ですね。
出会いから、あっという間に意気投合
―二人の出会いのきっかけは?
田辺:
村留学の報告会を聞きに荻ノ島に行ったときにあいさつしたのが最初の出会いです。その次は岡野町で行った水引のワークショップで会いました。
辻本:
私はちょうど物件を見に来ていて、ワークショップにも参加していました。
そこで「あ、同い年なんだー」と。
田辺:
初めてちゃんと話したのは、2020年6月に地元のクラブ活動「石黒水曜くらぶ」(※)に辻本さんが顔を出してくれた時。それまではちゃんと話したことはなかったです。村留学に来ていた子だな、くらいの認識でした。
(※)「石黒水曜くらぶ」:石黒地区の住民やゆかりのある方で組織する任意団体。毎週水曜に集まり、会議を行っている。
辻本:
私も、水引の子だな、と。
田辺:
そのあと、2020年7月の終わりくらいに、辻本さんと辻本さんの同僚の方と3人でお茶をしたときに、やっとがっつり話しました。
どっちが言ったかは忘れましたが「シェアハウスしたいんだよね」と話したら意気投合して。「よし、じゃあ進めるか」と。お互いのやりたいことが一致していました。
辻本:
田辺さんとフィーリングが合うな、という感覚はずっとありました。
スピーディに決まりました。田辺さんのご両親は石黒出身で、地域のことをよく知っているのでありがたいです。物件もいろいろあると聞いていたので、いけるんじゃないと思っていました。
―お互いに背中を押し合ったのかな。
辻本:
はい。ずっと山の方で暮らしたいと言っていましたが、1人だったら進まなかったと思います。
田辺:
同い年でお互い気が合うし、信頼しています。空気感が合うというか。貴重な相手だと思います。一度東京に出て、都会での生活が合わないと感じたのも一緒でした。
辻本:
たまに大阪が恋しくなることもありますけどね。電車に乗りたいとか(笑)。こっちは冬、電車のドアが手動なのにびっくりしました。「え、開かへん」ってドアを見ていたら、おばあちゃんが開けてくれて。「あ、そうやるんやー」って。
―石黒でシェアハウスを始めることに対して、周りの反応は?
辻本:
職場の上司は、私がどう生きたいかというのを酌んで応援してくれています。
他の方も、雪道の歩き方とか、ホワイトアウトといった雪国での生活をいろいろ教えてくれたり、ご飯を作りに行くよって言ってもらえたり(笑)。皆さん応援してくれていてありがたいです。心配はしてくれています。
雪がひどかったら無理せず町場(従来住んでいる市街地)に泊まります。
―シェアハウスの家賃は
田辺:
2人で月5千円です!ありがたいです。
辻本:
家賃が安いので2拠点での生活ができます。
キーワードは「やわやわ」
―1月から石黒での暮らしが始まりますが、どんな風に生活したい? やってみたいことは?
辻本:
本棚を作りたいです。
家のどこかに共有の本棚があるといいなと。本が好きなので、私たちが読んでもいいし、遊びに来た人が置いて行ってもいい。石黒のことを書いた本があってもいいなと思っています。
田辺:
バーベキューをしたいです。
お菓子を持って引っ越しのあいさつ回りをしていたら、お菓子の袋が玉ねぎに見えたみたいで。除雪していた方から「どこでバーベキューするん?」って電話がかかってきて。じゃあ今度やろうか、と。冬でも天気が良ければできますよね。
辻本:
集落のあいさつに回った時に、おばあちゃんに「若い人が来てくれてうれしい、ありがとう」と喜んでいただけるのが嬉しいです。地域の集まりに顔を出したり、お手伝いしたり、できるだけ地域の人たちとふれ合いたいです。
田辺:
定期的に上石黒のお母さんたちが集まっているので、日が合えば顔を出して一緒に何かできたらいいですね。お母さんたちは、飾り作りや、いろいろしています。今日はこんにゃくを煮ているみたいです。さっき顔を出してきました。
あとは、無理はしないこと。キーワードは「やわやわ」です。お互い補い合っていこうと思っています。家で気を張っていたくないので(笑)
辻本:
できるときに、できる人が、できることをやろうというスタンスです。
田辺:
2人いるから、どちらかがしんどい時はどちらかが補えばいいかなと。どっちもダメだったら、ほん投げる(※)よね(笑)。たまにはそういう時もある、無理はしない。
この家はとりあえず4月末まで借りています。その先はまだ分からないです。
生活が落ち着いたら仲間を呼びたいね。ここなら隣の家との距離が遠いので、多少にぎやかにしても迷惑は掛からないかな。いい距離感だと思います。
ほん投げる(※):放り投げる。新潟の方言。
辻本:
石黒は、若い人が友達を連れてきやすい環境かもしれません。またつながりができると思います。
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